温調関係(1)
1. ダイオード・センサ温度計:
1S1588などのスイッチング・ダイオード(一般のダイオードも)や、サーミスタは、温度が上がると抵抗が減少して、ダイオードにかかる順方向電圧が直線的に下がる傾向がある。(1S1588:
I f =0.2〜5mAでほぼ直線)
そこで、オペアンプの反転増幅機能を用いて、温度が上がると直線的に出力電圧も上がるように回路を作ることができる。回路図のオペアンプ(LM324)の@は反転増幅(零調レベル(VR1)と増幅倍率(VR2)設定)、Aは非反転増幅(VR10kはMAX出力レベル設定)になっている。(参考ページ) (オペアンプの+入力と−入力を入れ替えると出力の極性が反転するだけ)
R1(温度変化の少ない金皮抵抗(±1%)が望ましい)の値はセンサの抵抗により、また、R2はメータのフルスケールによって変える。 (”非反転”?・・・”右ギッチョ”みたいな名前だな、 反転の反転は非反転なのだ!)
調整は、メータの目盛りを決めて、センサを低温側(0℃、あるいは、室温)に入れてをVR1で、次に高温側(100℃など)をVR2で、再度低温側でVR1、・・・といった具合に、両方が合うまで交互に行なう。(
ex) アナログ・テスターの3Vレンジでは、20℃で0.50V、70℃で1.75Vに設定した。
高精度の場合は、棒温度計はあまり信用できない。)
* ダイオードの代わりに、サーミスタ(D53、103JT025(計測用)など)をそのまま、また、細い白金線、銅線を巻いて100Ω程度にした抵抗センサを非反転で用いることができる。
サーミスタ: D53は、20℃で5kΩ、60℃で2kΩ。(R1=15kΩの場合、20℃で約1V、50℃で600mV)
* また、−OUTと 0V から取ると、温度制御に使うことができる。
2. 温度調節器(電子サーモスタット):
1.で用いた スイッチング・ダイオード(1S1588)の順方向電圧の温度特性を、今度は、非反転で出力させ、リレーを用いた温度コントロールを行なう。(温度が下がると、Vf
が上がり、オペアンプ出力が出て、リレーを駆動する) この場合、直線性は必要なく、オペアンプ(LM358N(1電源・ローノイズ))の帰還抵抗は無く(=見かけ上
∞)、コンパレーターとなり、入力の V+ > V− のとき アースに対して約10V、それ以外は 0Vの出力となる。 出力は、2段のリレーを駆動し、100V・500Wのヒーターを断続する。(コーヒー・ウォーマーで実験した)
参照電圧の作成は、図のように抵抗(金属皮膜R)で正確に分割して、VRによる温度調整範囲(
ex)20−75℃)に収める必要がある。
ダイオードと発熱体は、伝熱、攪拌など何らかの熱的な結合をしなければならない。
3. 熱電対温度計:
熱電対の起電力は、ダイオードやサーミスタにより与えられる電圧に比べかなり小さいので、mV計で用いたオペアンプ発振回路(参考ページ 7.(2))で電圧に比例する周波数のノコギリ波を発生させ、低周波カウンタでデジタル表示する方式にした。参照冷接点はとりあえず室温として確認すると、100℃以上では安定した。(ただし、100℃以下の低温では直線性が良くない。シールド要) (* 本格的には、デジタル、アナログのいずれでも、熱電対用のオペアンプは計測用(INA128など)を用いる。)
鉛(m.p. 327.46℃)を試験管(凝固してさらに温度が下がると割れるので注意)に入れ、CA(クロメル-アルメル)熱電対を差込み、凝固点(加熱溶融してから放冷時、温度が一定になるところ)で較正した。
調整はクリチカルなので、VRは多回転型を使用。(300℃=3.00kHz表示
とする)
4. トライアック・コントローラ:
トライアック(TRIAC)によるAC100V(コンデンサーの耐圧を上げれば200Vにも使える)の電力制御は、図のSIN波の波形の部分のみを出力し、電球やヒータ、ドリル・掃除機・扇風機などの交流直巻き(ブラシ)モーターを制御することができる。(蛍光灯、同期モーターの一部は不可)
ダイアック(DIAC)・N413は、そのヒステリシス特性により、ブリッジと250kΩVRで与えられた電圧がブレイクオーバー電圧を超えるとトリガ・パルスを発生し、ACの半周期ごとに
ある位相の所からTRIACのGへ点孤パルス信号を与える。TRIACは、SCRと同様に、T1-T2間にかかる電圧が瞬間的に0になると電流が止まる。 ZNRは出力のパルス・ノイズ(フライバック、ひげノイズ)を吸収する。
この回路は24AMaxであるが、実際は連続使用で 10Aくらいまで。(フィラメントやヒータの低温時のラッシュ・カレント(突入電流)に注意) また、20Aまでの使用に対しては、TRIACを40Aのものに交換し、ノイズ吸収用のスナバー回路(右図)をトライアックの両端(T1−T2間)に付ける必要がある。
(* 昔からある定番のTRIAC調光回路(秋月電子(株)のキット)に、放熱器用のスペースをとるために基板を起こした。)